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調剤薬局、ドラッグストア、病院、製薬企業……薬剤師の転職先っていろいろあるけれど、結局どこが人気なの?そんな疑問を持っている薬剤師さんは多いのではないでしょうか。
SNSやネット記事を見ると、「病院はやりがい重視」「ドラッグストアは年収高め」「企業は狭き門」といった断片的な情報ばかりが目に入ってきて、余計に迷ってしまいますよね。今の職場に不満があって転職を考えているけれど、どこを選べば自分に合うのか分からない……そんな悩みを抱えている人も少なくないと思います。
まず押さえておきたいのは、データ上での”現実の人気ランキング”です。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」(令和4年)によると、薬剤師の就職先は薬局が約58%、病院・診療所が約18%、医薬品関係企業が約12%となっています。つまり、実際に働いている人の数で見ると、薬局が圧倒的に多いのが現実です。
一方で、新卒人気や「憧れ」という意味では、病院や大手製薬会社に根強い人気があります。また、転職市場で注目されているのは、年収アップが期待できるドラッグストアやMR、働き方を改善できる調剤薬局、キャリアアップを目指せる臨床開発系(CRC/CRA)などです。
転職市場としては、有効求人倍率は2.34倍(令和6年2月時点)と依然”売り手市場”ですが、以前のような「薬剤師という資格があれば就職先が見つかる」状況から「キャリアや人柄も重視される」状況にシフトしつつあります。条件の良い求人は競争率も高くなっているのが現状です。
この記事では、薬剤師が働ける主な転職先と、そこに実際どれくらいの人が働いているかをまず整理します。そのうえで、年収・働き方・やりがい・安定性など、価値観ごとに人気転職先をマッピングし、自分のタイプ別に「選びやすい選択肢」と「気をつけたいポイント」を紹介します。人気求人を逃さないための転職サイト・エージェントの使い方にも軽く触れていきます。
「人気だから」という理由で選ぶのではなく、「自分にとって納得感のある転職先」を見つけるためのガイドとして、ぜひ最後まで読んでみてください。
薬剤師の人気転職先はどこ?まずは全体像を整理しよう
転職先を考える前に、まずは「薬剤師がどこで働いているのか」という現実を数字で見ていきましょう。人気の定義にはいくつかの軸があり、それぞれで結果が異なります。
就職先データから見る「現実の人気ランキング」
厚生労働省の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2022年12月31日時点で届け出されている薬剤師323,690人の就業先内訳は以下のようになっています。
薬剤師の就業先割合(令和4年統計)
- 薬局:約58.9%(190,928人)
- 病院・診療所:約17.5%(56,653人)
- 医薬品関係企業:約11.5%(37,190人)
- 介護保険施設等:約2.6%(8,318人)
- 衛生行政機関・保健所等:約2.1%(6,741人)
- 大学:約1.6%(5,281人)
- その他・無職:約5.8%(18,579人)
この数字から分かるのは、「人数が多い=現実的に多くの人が選んでいる進路」という意味では、薬局がダントツで1位、次いで病院・医薬品関係企業という順番になっているということです。
薬局とドラッグストアを合わせると全体の約65%を占めており、多くの薬剤師が調剤や服薬指導を中心とした職場に勤めているのが現状です。これは、求人数の多さ、働きやすさ、未経験でも始めやすいといった理由から、実際的な選択肢として選ばれやすいためです。
一方で、「人数が多い=人気がある」とは必ずしも言えません。例えば、病院薬剤師は「やりがい」や「専門性」という意味では新卒から憧れられる人気職場ですが、求人数の少なさや年収の低さから、実際に就職できる人は限られています。
つまり、「現実の人気ランキング」と「憧れ人気ランキング」は別物だということを理解しておくことが大切です。
新卒・転職希望者に人気の職場タイプ
では、新卒や転職希望者にとって、どんな職場が「人気」なのでしょうか。
新卒に人気の転職先
新卒薬剤師に人気があるのは、以下のような職場です。
- 大手製薬会社(MR・研究開発):高年収・ネームバリュー・キャリアの幅広さ
- 病院(特に大学病院・急性期病院):専門性・チーム医療・やりがい
- 調剤薬局(大手チェーン):働きやすさ・安定性・教育制度
- ドラッグストア(大手チェーン):高年収・店舗運営経験・キャリアアップ
新卒では、「専門性を磨きたい」「医療に深く関わりたい」という理由から病院を第一希望にする人が多い一方で、実際には求人数の少なさや競争率の高さから、調剤薬局やドラッグストアに就職するケースが多くなっています。
転職市場で人気の転職先
転職を考えている薬剤師にとって人気があるのは、現在の不満を解消できる職場です。
- 年収アップを目指す人:ドラッグストア、MR、医薬品卸、高待遇の調剤薬局
- ワークライフバランス重視の人:カレンダー通りの調剤薬局、一部企業、公務員
- 専門性を磨きたい人:病院、製薬企業の研究開発、CRC/CRA
- 異業種チャレンジしたい人:化粧品メーカー、食品関連、一般企業のヘルスケア部門
転職市場では、「今の職場の何が不満で、次はどうしたいか」という軸で人気が分かれます。そのため、一概に「この職場が人気」とは言えず、自分の価値観に合った職場を選ぶことが重要になります。
薬剤師の転職市場の今|まだ売り手?本当に厳しい?
「薬剤師は売り手市場」とよく言われますが、実際のところどうなのでしょうか。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和6年2月分)」によると、医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.34倍です。全職種平均の1.20倍と比べると、依然として求人数が多い売り手市場であることが分かります。
有効求人倍率の推移
- 平成29年度:3.64倍
- 平成30年度:3.32倍
- 令和元年度:3.14倍
- 令和2年度:2.88倍
- 令和3年度:2.91倍
- 令和4年度:2.51倍
- 令和6年2月:2.34倍
この数字を見ると分かるように、有効求人倍率は年々下がってきています。つまり、以前のような「薬剤師という資格さえあれば、どこでも好条件で働ける」という状況は終わりつつあり、「キャリアや人柄、スキルも重視される」時代に移りつつあるのです。
特に、調剤薬局やドラッグストアでは競争が激化しており、診療報酬改定の影響もあって、以前ほど簡単に高待遇の求人を見つけられなくなっています。一方で、病院薬剤師は全国的に不足しており、地域によっては引く手あまたという状況です。
つまり、「薬剤師全体としては売り手市場だが、職種や地域、条件によっては競争が激しい」というのが現在の転職市場の実態です。好条件の求人を取りに行くには、情報収集と準備が重要になってきています。
薬剤師に人気の転職先7選|定番から企業・公務員まで
ここからは、薬剤師に人気の転職先を7つピックアップして、それぞれの特徴、メリット・デメリット、向いている人を紹介していきます。
調剤薬局|働きやすさと求人数の多さで根強い人気
調剤薬局は、薬剤師の就職先として最も一般的で、求人数も圧倒的に多い職場です。
主な仕事内容
- 処方せんに基づく調剤
- 服薬指導・薬歴管理
- 在宅医療への参画(訪問薬剤管理指導)
- OTC医薬品の販売・相談対応
- 健康サポート薬局としての地域活動
メリット
調剤薬局の最大のメリットは、働きやすさと求人数の多さです。全国どこでも求人があり、未経験者やブランク明けでも受け入れてもらいやすい環境です。
勤務時間が比較的規則的で、平日のみ、土曜午前のみといったシフトが多く、ワークライフバランスを保ちやすいのも特徴です。大手チェーンでは研修制度が充実しており、初めて転職する人でも安心して働けます。
また、在宅医療に力を入れている薬局では、患者さんの生活に深く関わる経験ができ、やりがいを感じられることもあります。
デメリット
一方で、調剤薬局にもデメリットはあります。
業務内容が処方せん調剤中心になるため、扱う医薬品の種類や症例が限られ、「専門性が広がりにくい」と感じる人もいます。特に小規模な薬局では、ルーティンワークになりやすく、スキルアップの実感が持ちづらいことがあります。
また、年収は病院よりは高いものの、ドラッグストアやMRと比べると低めです。昇給幅も限られており、長く働いても大幅な年収アップは期待しにくい傾向があります。
さらに、診療報酬改定の影響を受けやすく、経営状況によっては待遇が悪化する可能性もあります。
向いている人
- ワークライフバランスを重視したい人
- 地域医療に貢献したい人
- 未経験やブランク明けで復職したい人
- 患者さんと長期的に関わりたい人
ドラッグストア|高年収&OTC販売で人気の転職先
ドラッグストアは、高年収と幅広い業務経験ができることで、転職市場で高い人気を誇ります。
主な仕事内容
ドラッグストアには、調剤併設型とOTC専門店の2タイプがあります。
- 調剤併設型:処方せん調剤+OTC販売+接客
- OTC専門店:一般用医薬品の販売・相談+健康相談+商品陳列・在庫管理
メリット
ドラッグストアの最大の魅力は、年収の高さです。初任給から月給30万円以上という求人も多く、病院や調剤薬局と比べて明らかに高い傾向があります。店長やエリアマネージャーといった管理職へのキャリアパスもあり、年収600万円から800万円を目指すことも可能です。
また、OTC医薬品の販売や健康相談を通じて、セルフメディケーションを支援するやりがいも感じられます。商品知識や接客スキルも身につき、将来的に独立開業を考えている人にとっても良い経験になります。
大手チェーンでは福利厚生が充実しており、社員割引や各種手当も期待できます。
デメリット
一方で、ドラッグストアならではの大変さもあります。
接客業としての側面が強く、レジ打ち、品出し、在庫管理、清掃といった業務も担当することがあります。土日祝日や夜間のシフト勤務が基本で、プライベートの予定が立てにくいという声もあります。
また、店舗によっては販売ノルマがあり、プレッシャーを感じることもあります。OTC医薬品だけでなく、化粧品や日用品の販売も求められるため、「薬剤師としての専門性を活かせない」と感じる人もいます。
さらに、人手不足の店舗では、薬剤師が1人しかいないために休憩が取りづらかったり、長時間労働になったりすることもあります。
向いている人
- 年収アップを重視したい人
- 接客が得意で人と話すのが好きな人
- 店舗運営や経営に興味がある人
- 将来的に独立開業を考えている人
病院薬剤師|やりがい・専門性重視で人気の職場
病院薬剤師は、新卒から根強い人気があり、「やりがい」や「専門性」を求める人に選ばれる職場です。
主な仕事内容
- 入院患者の調剤・注射薬調剤
- 病棟業務(薬剤管理指導・持参薬確認)
- チーム医療への参画(ICT、NST、緩和ケアなど)
- 医薬品情報管理(DI業務)
- 治験管理・がん化学療法の調製
メリット
病院薬剤師の最大のメリットは、臨床現場で深く医療に関わり、専門性を磨けることです。医師や看護師と連携しながら患者さんの治療に貢献できるため、「薬剤師としてのやりがい」を強く感じられます。
がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、救急認定薬剤師など、専門資格を取得してキャリアアップする道もあります。急性期病院では、重症患者の薬物治療に携わり、高度なスキルを身につけることができます。
また、大学病院や研修指定病院では、充実した教育・研修制度があり、若手のうちからしっかりとした知識と技術を習得できます。
デメリット
一方で、病院薬剤師にはいくつかのデメリットがあります。
最も大きいのは、年収の低さです。厚生労働省の調査によると、病院薬剤師の平均年収は400万円台後半から500万円台前半で、調剤薬局やドラッグストアと比べて低い傾向があります。特に公立病院や中小病院では、初任給が月20万円前後ということもあります。
また、夜勤や当直があり、体力的な負担が大きいことも特徴です。緊急時の対応やオンコール体制など、プライベートの時間が制限されることもあります。
さらに、求人数が少なく、競争率が高いため、転職のハードルが高いことも課題です。
向いている人
- 専門性を磨きたい人
- チーム医療に興味がある人
- 患者さんの治療に深く関わりたい人
- 年収よりもやりがいを優先したい人
製薬会社・企業薬剤師(MR・開発・学術など)
製薬会社や企業で働く薬剤師は、高年収とキャリアの幅広さから、人気の転職先です。
主な職種
- MR(医薬情報担当者):医療機関への営業・情報提供
- 研究開発:新薬の研究・臨床試験
- 学術・DI:医薬品情報の管理・問い合わせ対応
- 薬事:承認申請・薬事法対応
- 品質管理・品質保証:製造工程の管理・品質チェック
- 医薬品卸:医療機関への医薬品供給・情報提供
メリット
製薬企業の最大の魅力は、高年収です。特にMRは、30代で年収850万円から1,000万円に達することもあり、薬剤師の中では最も高い年収が期待できる職種です。
また、大手企業では福利厚生が非常に充実しており、住宅手当、家族手当、退職金、社員持株会など、安定した待遇が受けられます。
研究開発や学術などの職種では、最先端の医療・医薬品に携わることができ、専門性を深めることができます。将来的には、マネジメント職や経営企画など、キャリアの選択肢も広がります。
デメリット
一方で、企業薬剤師にもデメリットがあります。
最も大きいのは、求人数の少なさです。特にMRや研究開発は、新卒採用が中心で、中途採用の枠は非常に限られています。競争率が高く、狭き門であることを理解しておく必要があります。
MRの場合、営業職としての側面が強く、ノルマやプレッシャーがあります。また、全国転勤が前提の企業も多く、勤務地を選べないことがあります。接待や出張も多く、プライベートの時間が制限されることもあります。
研究開発の場合、博士号や研究実績が求められることが多く、未経験からの転職は難しいのが現実です。
向いている人
- 年収アップを重視したい人
- 営業やコミュニケーションが得意な人(MR)
- 研究や学術に興味がある人(研究開発・学術)
- 転勤や出張に抵抗がない人
公務員薬剤師・行政機関|安定志向に人気の転職先
公務員薬剤師は、安定性と社会的信用の高さから、一定の人気がある転職先です。
主な仕事内容
- 保健所:薬事監視・衛生検査・健康相談
- 都道府県庁・市役所:薬務行政・医薬品の承認審査
- 厚生労働省:薬事行政・医薬品政策の立案
- 麻薬取締部(麻薬Gメン):麻薬の取り締まり
- 国立病院機構:国立病院での薬剤師業務
メリット
公務員薬剤師の最大のメリットは、安定性です。公務員として、給与や待遇が安定しており、倒産やリストラの心配がありません。退職金や年金も充実しており、長期的なライフプランが立てやすいのが特徴です。
また、行政機関での勤務では、薬事行政や公衆衛生といった幅広い視点で社会に貢献できます。地域の健康を守る仕事に携わることで、大きなやりがいを感じられます。
勤務時間が比較的規則的で、土日祝日が休みのことが多く、ワークライフバランスも保ちやすい環境です。
デメリット
一方で、公務員薬剤師にもデメリットがあります。
最も大きいのは、募集枠の少なさです。公務員薬剤師の採用は、年に数名から十数名程度と非常に限られており、採用試験の競争率も高くなっています。
また、年収は調剤薬局やドラッグストアと比べて低めです。特に若いうちは給与が低く、昇給も緩やかなため、年収重視の人には物足りないかもしれません。
さらに、異動が多く、希望しない部署に配属されることもあります。薬剤師としての業務から離れた事務作業が中心になることもあり、「専門性が活かせない」と感じる人もいます。
向いている人
- 安定性を重視したい人
- 行政や公衆衛生に興味がある人
- 社会貢献意識が高い人
- ワークライフバランスを大切にしたい人
CRC・CRAなど臨床開発系|キャリア志向の人気先
CRC(治験コーディネーター)やCRA(臨床開発モニター)は、薬剤師からのキャリアチェンジとして人気が高まっている職種です。
主な仕事内容
- CRC:治験の実施サポート・被験者のケア・データ管理
- CRA:治験が適切に実施されているかのモニタリング・医療機関との連携
メリット
CRC・CRAの魅力は、新薬開発という最先端の医療に携わることができる点です。自分が関わった薬が承認され、患者さんの治療に役立つという大きなやりがいがあります。
年収も、経験を積めば500万円から600万円以上が期待でき、調剤薬局やドラッグストアと同等か、それ以上の収入を得られます。
また、土日祝日が休みで、勤務時間も比較的規則的なため、ワークライフバランスを保ちやすい環境です。SMO(治験施設支援機関)やCRO(開発業務受託機関)といった企業に所属するため、福利厚生も充実しています。
病院や調剤薬局での経験を活かしつつ、新しいフィールドにチャレンジできるため、キャリアの幅を広げたい人に向いています。
デメリット
一方で、CRC・CRAにもデメリットがあります。
CRCの場合、複数の医療機関を担当することが多く、移動が多いため体力的な負担があります。被験者の都合に合わせて土日対応が必要になることもあります。
CRAの場合、全国出張が頻繁にあり、月の半分以上を出張先で過ごすこともあります。プライベートの時間が制限されるため、家族との時間を大切にしたい人には厳しい面があります。
また、未経験からCRC・CRAになる場合、最初は年収が下がることもあります。経験を積んでから年収が上がっていく仕組みなので、長期的なキャリアプランを考える必要があります。
向いている人
- 新薬開発に興味がある人
- キャリアチェンジしたい人
- コミュニケーション能力が高い人
- 出張や移動に抵抗がない人
その他の人気転職先(化粧品メーカー・食品系・教育など)
薬剤師資格を活かしつつ、異業種に近いフィールドで働く選択肢もあります。
主な職種
- 化粧品メーカー:化粧品の研究開発・品質管理・薬事
- 食品関連:健康食品の開発・品質管理
- 教育:薬学部の教員・予備校講師
- 医療系コンサルティング:医療機関の経営支援
- 医療系出版・メディア:医療情報の編集・ライティング
特徴
これらの職場は、求人数は多くないものの、「やりたいことありき」で人気があります。
化粧品メーカーでは、薬剤師の知識を活かして、安全性の高い製品開発に携わることができます。特に、薬用化粧品や医薬部外品の開発では、薬剤師の専門知識が重宝されます。
食品関連では、健康食品やサプリメントの開発、品質管理などで、薬剤師の知識が活かせます。
教育分野では、薬学部の教員や予備校講師として、次世代の薬剤師を育てる仕事に携わることができます。
注意点
これらの職種は、求人数が非常に少なく、タイミングが合わないと転職が難しいのが現実です。また、薬剤師手当がつかないことが多く、年収は一般的な薬剤師よりも低くなる可能性があります。
ただし、「自分のやりたいこと」を優先したい人にとっては、非常に魅力的な選択肢です。興味がある分野があれば、転職サイトに登録して情報収集をしておくと良いでしょう。
価値観別・タイプ別で見る「人気転職先」
ここまで、薬剤師の主な転職先を紹介してきましたが、「結局、どこが自分に合っているの?」という疑問が残っている人も多いと思います。ここでは、価値観やタイプ別に、おすすめの転職先を整理していきます。
年収アップ重視派に人気の転職先
「今の年収に不満がある」「もっと稼ぎたい」という人には、以下の転職先が人気です。
高年収が期待できる転職先
- MR・製薬企業:30代で年収850万円から1,000万円も可能
- ドラッグストア:初任給から月給30万円以上、店長で年収600万円から800万円
- 医薬品卸:年収500万円から700万円程度
- 高待遇の調剤薬局:大手チェーンや独立系で年収600万円以上
メリット
これらの職場では、若いうちから高い年収を得ることができ、経済的な安定が得られます。特にMRやドラッグストアでは、成果次第でさらに年収を上げることも可能です。
注意点
一方で、年収が高い職場には、それなりの理由があります。
- MR:営業ノルマ、全国転勤、接待や出張
- ドラッグストア:土日祝日勤務、シフト制、長時間労働
- 医薬品卸:営業活動、出張
年収アップと引き換えに、働き方や勤務地の自由度が制限されることを理解しておく必要があります。「年収は高いが、プライベートの時間がない」という状況に陥らないよう、自分の優先順位をしっかり考えましょう。
ワークライフバランス重視派に人気の転職先
「家族との時間を大切にしたい」「プライベートを充実させたい」という人には、以下の転職先が人気です。
ワークライフバランスが保ちやすい転職先
- 調剤薬局(カレンダー通りの営業):土日祝日休み、残業少なめ
- 公務員薬剤師:土日祝日休み、勤務時間が規則的
- 企業薬剤師(学術・薬事など):土日祝日休み、出張少なめ
- CRC:比較的規則的な勤務時間
メリット
これらの職場では、平日のみの勤務や、カレンダー通りの休日が確保されやすく、家族との時間や趣味の時間を大切にできます。残業も比較的少なめで、プライベートの予定が立てやすいのが特徴です。
注意点
一方で、ワークライフバランスを重視すると、年収はさほど伸びない可能性があります。調剤薬局や公務員は、昇給幅が限られており、大幅な年収アップは期待しにくいのが現実です。
また、調剤薬局の場合、店舗によっては土曜午前勤務や遅番があることもあるため、求人票をしっかり確認することが大切です。
「年収よりも働き方を優先したい」という明確な価値観があるなら、ワークライフバランス重視の転職先を選ぶのが良いでしょう。
専門性・やりがい重視派に人気の転職先
「薬剤師としてのスキルを磨きたい」「医療に深く関わりたい」という人には、以下の転職先が人気です。
専門性を磨ける転職先
- 病院:チーム医療、専門薬剤師資格の取得
- 製薬企業の研究開発:新薬開発、最先端の研究
- CRC/CRA:治験、臨床開発
- 行政機関:薬事行政、公衆衛生
メリット
これらの職場では、臨床現場や最先端の医療に深く関わることができ、薬剤師としての専門性を高めることができます。専門薬剤師や認定薬剤師の資格を取得したり、研究成果を学会で発表したりと、キャリアアップの機会も豊富です。
患者さんの治療に貢献できる実感や、新薬開発に携わるやりがいなど、「薬剤師としての使命」を強く感じられるのが特徴です。
注意点
一方で、専門性を磨くには、時間と労力がかかります。病院の場合、夜勤や当直があり、体力的な負担が大きいこともあります。また、年収は調剤薬局やドラッグストアと比べて低めです。
研究開発の場合、博士号や研究実績が求められ、未経験からの転職は難しいのが現実です。
「年収が多少低くても、やりがいを優先したい」という強い意志があるなら、専門性重視の転職先を選ぶと良いでしょう。ただし、キャリア初期の数年間は、年収面での我慢が必要になることも理解しておきましょう。
異業種チャレンジ派に人気の転職先
「薬剤師資格を活かしつつ、違うフィールドで働きたい」という人には、以下の転職先が人気です。
異業種チャレンジの転職先
- 化粧品メーカー:化粧品の研究開発・品質管理
- 食品関連:健康食品の開発・品質管理
- 一般企業のヘルスケア部門:健康経営支援・産業保健
- 医療系コンサルティング:医療機関の経営支援
- 医療系出版・メディア:医療情報の編集・ライティング
メリット
これらの職場では、薬剤師としての知識を活かしつつ、新しいフィールドで働くことができます。調剤や服薬指導とは異なる仕事に携わることで、キャリアの幅が広がり、自分の可能性を広げることができます。
また、「職種は薬剤師以外」という働き方をすることで、薬剤師とは違う視点や スキルを身につけることができます。
注意点
一方で、異業種チャレンジには、いくつかの注意点があります。
まず、求人数が非常に少なく、タイミングが合わないと転職が難しいことです。また、薬剤師手当がつかないことが多く、年収は一般的な薬剤師よりも低くなる可能性があります。
さらに、未経験の職種に転職する場合、最初は一から学び直す必要があり、苦労することもあります。
「やりたいことが明確にある」「薬剤師以外の仕事にチャレンジしたい」という強い意志があるなら、異業種チャレンジは魅力的な選択肢です。ただし、期待と現実のギャップを理解したうえで、慎重に検討しましょう。
人気だからといって誰にでも合うわけじゃない|転職先の選び方
ここまで、薬剤師の人気転職先を紹介してきましたが、「人気=自分に合う」とは限りません。ここでは、転職先の選び方のポイントを整理していきます。
「人気ランキング」だけで選ぶと後悔しやすい理由
「人気の転職先なら、間違いないだろう」と思いがちですが、実はそうとも限りません。
病院人気と年収のギャップ
病院薬剤師は、新卒から根強い人気がありますが、年収は調剤薬局やドラッグストアと比べて低めです。「やりがいはあるけれど、生活が苦しい」という状況に陥る人もいます。
特に、家族を養わなければいけない立場にある人や、奨学金の返済がある人にとっては、年収の低さが大きな負担になることがあります。
ドラッグストア人気とノルマ・負担のギャップ
ドラッグストアは、高年収で人気がありますが、土日祝日勤務、シフト制、販売ノルマといった負担もあります。「年収は上がったけれど、プライベートの時間がなくなった」「ノルマがきつくて精神的に辛い」という声もあります。
企業人気と求人数のギャップ
製薬企業のMRや研究開発は、高年収とキャリアの幅広さから人気がありますが、求人数が非常に少なく、競争率が高いのが現実です。「応募しても書類選考で落ちる」「面接までたどり着けない」という状況に直面することもあります。
このように、「人気がある=自分にも合う」とは限らないのです。人気ランキングだけで選ぶのではなく、自分の価値観や状況に合った転職先を選ぶことが大切です。
自分の優先順位を整理する3つの質問
転職先を選ぶ前に、まずは自分の優先順位を整理しましょう。以下の3つの質問に答えてみてください。
質問1:何を一番変えたいか?
- 年収を上げたい
- 休日を増やしたい
- 仕事内容を変えたい
- 人間関係を改善したい
- 勤務地を変えたい
今の職場で最も不満に感じていることは何ですか?それを解消できる転職先を選ぶことが、転職成功の第一歩です。
質問2:5年後、どんな働き方をしたいか?
- 専門性を磨いて、認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得したい
- 管理職になって、マネジメントスキルを身につけたい
- ワークライフバランスを保ちながら、長く働き続けたい
- 独立開業して、自分の薬局を持ちたい
- 異業種にチャレンジして、キャリアの幅を広げたい
5年後、10年後の自分をイメージすることで、今どの転職先を選ぶべきかが見えてきます。
質問3:譲れない条件は何か?
- 年収は◯◯万円以上
- 土日祝日は休みたい
- 転勤はしたくない
- 夜勤はしたくない
- 家から◯◯分以内の職場
譲れない条件を明確にすることで、転職先の候補を絞り込むことができます。
これらの質問に答えることで、「自分にとって何が大切か」が見えてきます。その優先順位に基づいて、転職先を選びましょう。
人気転職先を候補にしつつ、”現場のリアル”もチェックする方法
転職先の候補が絞れたら、次は「現場のリアル」を確認しましょう。求人票だけでは分からない情報を集めることが、転職成功のカギです。
転職サイト・エージェントを活用する
薬剤師専門の転職サイトやエージェントに登録すると、キャリアアドバイザーから職場の内部情報を教えてもらえます。
- 実際の残業時間
- 有給休暇の取得率
- 人間関係の雰囲気
- 離職率
- 昇給・賞与の実績
こうした情報は、求人票には書かれていないことが多いため、エージェントを通じて確認することが重要です。
口コミサイトを活用する
転職サイトの口コミ機能や、企業口コミサイトを活用して、実際に働いている(働いていた)人の声を確認しましょう。ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見もチェックすることで、職場のリアルが見えてきます。
職場見学を依頼する
可能であれば、職場見学を依頼しましょう。実際に職場を訪れることで、雰囲気や働いている人の様子を直接確認できます。職場見学の際には、以下のポイントをチェックしましょう。
- 薬剤師同士のコミュニケーションの様子
- 職場の清潔さ・整理整頓
- 患者さんや顧客への対応
- スタッフの表情(明るいか、疲れているか)
面接で質問する
面接の際には、こちらからも積極的に質問しましょう。
- 1日の業務の流れ
- 繁忙期の残業時間
- 有給休暇の取得状況
- 研修制度の内容
- キャリアアップの道筋
こうした質問をすることで、職場の実態がより明確になります。
「人気の転職先」を候補にしつつ、「自分に合うかどうか」を現場のリアルな情報から判断することが、転職成功のポイントです。
人気求人を逃さないための転職サイト・エージェント活用法
ここまで、薬剤師の人気転職先と選び方を紹介してきましたが、最後に「人気求人を逃さないための転職サイト・エージェント活用法」をお伝えします。
薬剤師専門転職サイトが人気な理由
薬剤師の転職活動では、薬剤師専門の転職サイト・エージェントを活用するのが一般的です。その理由は、以下の通りです。
求人の量と質が圧倒的に多い
薬剤師専門の転職サイトには、調剤薬局、ドラッグストア、病院、企業など、さまざまな職場の求人が集まっています。大手サイトでは、5万件以上の求人を保有しており、自分の希望条件に合った求人を見つけやすくなっています。
非公開求人にアクセスできる
転職サイトに登録すると、一般には公開されていない「非公開求人」にアクセスできます。非公開求人には、高年収、好条件、人気企業など、魅力的な求人が多く含まれています。
職場の内部情報が集まりやすい
転職エージェントは、職場と直接つながりがあるため、求人票には書かれていない内部情報を持っています。実際の残業時間、人間関係、離職率など、転職前に知りておきたい情報を教えてもらえます。
転職活動のサポートが受けられる
キャリアアドバイザーが、求人紹介から面接対策、年収交渉まで、転職活動をトータルでサポートしてくれます。初めて転職する人や、忙しくて時間がない人にとっては、大きな助けになります。
人気転職先ごとに強いサイト・エージェントの傾向
転職サイトによって、得意な職種や強みが異なります。自分の希望する転職先に合わせて、サイトを選びましょう。
ドラッグストア求人に強いサイト
大手転職サイトでは、ドラッグストアの求人が豊富に掲載されています。調剤併設型からOTC専門店まで、幅広い求人を比較できます。
病院・調剤薬局の人気ランキングから探せるサイト
一部のサイトでは、実際の閲覧数をもとにした「人気求人ランキング」を公開しています。どんな求人が注目されているかを知ることで、転職先選びの参考になります。
企業求人に強いサイト
製薬企業やCRC/CRA、医薬品卸など、企業求人を多く扱うサイトもあります。企業への転職を考えている人は、こうしたサイトに登録しておくと良いでしょう。
複数登録して比較するのがおすすめ
転職サイトは、1つに絞る必要はありません。むしろ、2〜3社に登録して、それぞれの求人を比較するのがおすすめです。
- サイトAで紹介された求人と、サイトBで紹介された求人を比較できる
- キャリアアドバイザーの質を比較できる
- 非公開求人の数が増える
複数のサイトに登録することで、より多くの選択肢から最適な転職先を選ぶことができます。
転職活動のステップとスケジュール感
最後に、転職活動の流れとスケジュール感を簡単に紹介します。
ステップ1:情報収集(1〜2週間)
まずは、転職サイトに登録して、どんな求人があるかを確認しましょう。自分の希望条件に合った求人がどれくらいあるかを把握します。
ステップ2:優先順位の整理(1週間)
先ほど紹介した3つの質問に答えて、自分の優先順位を整理しましょう。「何を一番変えたいか」「5年後どうありたいか」「譲れない条件は何か」を明確にします。
ステップ3:サイト登録・キャリアアドバイザーとの面談(1〜2週間)
転職サイトに正式登録し、キャリアアドバイザーと面談します。自分の希望条件を伝え、おすすめの求人を紹介してもらいます。
ステップ4:求人紹介・応募(2〜4週間)
紹介された求人の中から、応募する求人を選びます。複数の求人に同時に応募することも可能です。
ステップ5:面接(2〜4週間)
書類選考に通過したら、面接に進みます。面接は、1〜2回行われることが一般的です。キャリアアドバイザーが面接対策をサポートしてくれます。
ステップ6:内定・条件交渉(1〜2週間)
内定が出たら、年収や勤務開始日などの条件を交渉します。キャリアアドバイザーが交渉を代行してくれることもあります。
全体のスケジュール感
転職活動は、準備から内定まで、2〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。急いで転職したい場合は、1ヶ月程度で決めることも可能ですが、じっくり比較検討したい場合は、3〜4ヶ月程度を見ておくと良いでしょう。
現職の退職手続きや引継ぎを考えると、転職活動を始めてから実際に新しい職場で働き始めるまでには、3〜6ヶ月程度かかることが多いです。
薬剤師の人気転職先選びまとめ|「自分にとっての人気」を見つけよう
ここまで、薬剤師の人気転職先について、さまざまな角度から見てきました。最後に、記事全体の要点を整理しましょう。
データで見る”現実の人気”は、薬局・病院・医薬品関係企業が上位
厚生労働省の統計によると、薬剤師の約58.9%が薬局で働いており、次いで病院・診療所が約17.5%、医薬品関係企業が約11.5%となっています。求人数の多さや働きやすさから、実際に多くの人が選んでいるのがこれらの職場です。
「憧れ人気」「年収人気」「安定人気」など、人気の軸は複数ある
一方で、「人気」の定義は一つではありません。
- 憧れ人気:病院、大手製薬会社
- 年収人気:MR、ドラッグストア、医薬品卸
- 安定人気:公務員、大手調剤薬局
- ワークライフバランス人気:カレンダー通りの調剤薬局、一部企業
- 専門性人気:病院、製薬企業の研究開発、CRC/CRA
自分が何を優先するかによって、「人気の転職先」は変わってきます。
価値観ごとに人気転職先が変わる
- 年収アップなら:企業(MR)、ドラッグストア、医薬品卸、高待遇の調剤薬局
- ワークライフバランスなら:調剤薬局(カレンダー通り)、公務員、一部企業
- 専門性重視なら:病院、製薬企業の研究開発、CRC/CRA、行政機関
- 異業種チャレンジなら:化粧品メーカー、食品関連、一般企業のヘルスケア部門
自分の価値観に合った転職先を選ぶことが、転職成功のカギです。
薬剤師転職市場は依然として売り手寄りだが、条件の良い求人を取るには情報収集と準備が重要
有効求人倍率は2.34倍と、全職種平均の1.20倍よりも高く、依然として売り手市場です。しかし、以前のような「資格があれば好条件で働ける」状況は終わりつつあり、競争が激しくなっています。
条件の良い求人を取るには、以下のことが重要です。
- 複数の転職サイトに登録して、求人情報を比較する
- キャリアアドバイザーから職場の内部情報を聞く
- 自分の優先順位を明確にして、ブレない軸を持つ
- 職場見学や面接で、現場のリアルを確認する
「ランキングの1位・2位」よりも、”自分が納得して選べるかどうか”のほうが大事
最後に、最も大切なことをお伝えします。
転職先を選ぶ際に、「人気ランキングの1位だから」「みんなが選んでいるから」という理由で決めるのは危険です。大切なのは、「自分にとって納得できる転職先かどうか」です。
- 今の職場の何が不満で、次は何を変えたいのか
- 5年後、10年後、どんな働き方をしたいのか
- 年収・働き方・やりがい・安定性のうち、何を一番大切にしたいのか
こうした問いに、自分なりの答えを持つことが、転職成功への第一歩です。
この記事が、あなたの転職先選びの参考になれば嬉しいです。「自分にとっての人気転職先」を見つけて、納得のいく転職を実現してください。
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